低酸素イメージング(固形腫瘍)
低酸素環境下においては、低酸素誘導因子 hypoxia inducible factor 1(HIF-1)等の発現が増加し腫瘍細胞の増殖分化、浸潤が誘導され、更なる悪性化に寄与すると考えられています。また、固形腫瘍内での低酸素状態は、化学療法および放射線療法において治療抵抗性を示す大きな要因の一つであると考えられております。そのため、腫瘍の低酸素状態を評価することは、腫瘍の悪性度判定および治療計画を設定する上で重要であり、低酸素状態を改善するための増感剤が種々開発され、治療への応用が計られました。2-nitroimidazoleは低酸素状態で還元され細胞内に貯留する性質を有しており、その誘導体化合物であるmisonidazoleは代表的な放射線増感剤の一つとして1980年代には盛んに臨床研究に用いられました。現在では大量投与による中枢神経毒性の懸念から臨床ではほとんど使用されておりませんが、その低酸素状態評価の有用性から類似化合物のpimonidazoleがin vitro用試薬として汎用されています。一方、PET用薬剤は含有化合物の薬効薬理を期待するものではなく、ごく微量の化合物の体内動態を追跡する手段として利用できるため、misonidazoleでも使用可能です。すなわち、misonidazoleに18Fを標識したものを[18F]FMISOとしてPET検査用の低酸素イメージング薬剤として利用しています (図1)。
[18F]FMISO-PET検査の特徴
細胞内の酸素分圧は、正常細胞で24~66mmHgとされており、HIF-1活性が10~15mmHgから誘導されることから、腫瘍細胞の酸素分圧は10 mm Hg以下とされています。これに対して[18F]FMISOは2~3mmHg以下で集積すると報告され、その集積度と悪性度が良く相関する腫瘍細胞があります。例えば、脳腫瘍の多発性神経膠芽腫と神経膠腫は鑑別できるとされており、腫瘍の状態を把握し、その後の治療方針を決定する上で貴重な情報をもたらしてくれます(図2)。
また、[18F]FMISO-PET検査を複数回行う際に得られる画像の再現性についても、中2日開けて検査した2回の画像を比較した際、極めて高い再現性があることも報告されています。したがって、放射線治療における増感療法の効果判定や、治療計画の設定に関して有用な一助になると考えられます。
また、[18F]FMISO-PET検査を複数回行う際に得られる画像の再現性についても、中2日開けて検査した2回の画像を比較した際、極めて高い再現性があることも報告されています。したがって、放射線治療における増感療法の効果判定や、治療計画の設定に関して有用な一助になると考えられます。
[18F]FMISO-PET検査の開始
当センターでは、住友重機械工業社製の18F多目的合成装置を用いて、[18F]FMISO標識合成法および無菌製剤化を確立(図3)するとともに、品質管理における規格基準値を設定し[18F]FMISO-PET検査を開始しました。
[18F]FMISO-PET検査の有用性の検証
今後、当医療法人グループ内あるいは外部の研究、医療機関と共に、腫瘍に対する薬物あるいは放射線治療の治療効果判定等、多岐にわたる[18F]FMISO-PET検査の有用性について検討を加えていきたいと考えております。